臨界期

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育児における臨界期について

ー 臨界期とは
 

臨界期とは


子供はそれぞれ親から受け継いだ遺伝子を持っています。しかし、その遺伝情報は刺激がなければ正常に機能することはできません。
例えば、生まれたばかりの子猫の目を2週間ほど閉じたままにすると視力を失ってしまいます。
この実験によってわかることは視覚に対する正常な遺伝子はあったものの、視覚に対する刺激が、ある「大切な時期」になかったため、視覚機能が失われたのです。

その「大切な時期」というのが「臨界期」※と呼ばれる時期です。
 
臨界期は、脳の中で覚えたり感じたりする神経回路(ニューロン)が、外からの刺激により集中的に作られたり、回路の組み替えが盛んに行われる時期です。
また、学習を成立させる最も感性豊かな限られた時期でもあります。
「視覚の臨界期」「聴覚の臨界期」など、それぞれの機能には、一生に一度しかない絶対期間の「臨界期」が存在するのです。
 

※人の場合は可逆的と言って、能力をある程度遡って取り戻すことができるので、厳しい臨界期ではなく「感受性期」(または敏感期と呼ばれることもある)と呼びます。このページでは、人も含めた生物として分かりやすく考えるために臨界期という言葉を使います。

一生に一度だけの臨界期


脳ではインプットが少ない神経回路(刺激を受けない部分)は脱落してしまい、インプットされる情報が多いほど(刺激が多いほど)回路が強化されるという仕組みになっています。
 
乳幼児における刺激とは、話しかけること、食べさせてあげること、抱っこでゆらゆらすること、触れること、手から伝わる温度、音、気温など、人との関わりや生活環境の全てです。
 
臨界期は、一生のうちで一度だけです。
「臨界期」までに一度も使われなかった脳細胞は一生必要ないと判断され、臨界期を越えた時点から消滅していく運命となるのです。
盲目になった猫は「視覚」の「臨界期」に適切な刺激を受けなかったため、脳(大脳皮質視覚野)の神経回路はその眼に対する反応性を失ってしまい、結果として盲目となったと言えます。
鳥が「さえずり」を得るためには、3~6週間ほど親鳥や成鳥にずっとついて学習しなければなりません。もし仮に一定期間幼鳥の耳をふさぎ、模倣するための鳴き声が耳に入らないようにすると、その鳥は「さえずり」が出来ず、成長しても仲間集団には入れず求愛も出来ないことになります。
 
このことを裏付けるように、遊び道具のない環境で育ったネズミに比べ遊び道具をたくさん与えたネズミの方が脳の神経回路は大変発達し、脳の重量も重くなったという報告もあります。

人間の場合も同様です。
「ことば」についての臨界期は、生後約6ヶ月位から神経回路の組み換えが始まり、12歳前後で終わるといわれています。
また、五感の中では、聴覚が一番早く臨界期を迎え、胎児の頃からスイッチがオンになると言われています。
他の音と比べることなく音の高さを特定できる「絶対音感」に関する「臨界期」は3~5歳から9歳前後までであり、残念ながら幼少期にしか身に付けることがでないとも言われています。 
 
生物の機能には、「視覚の臨界期」「聴覚の臨界期」「言語能力の臨界期」など、一生に一度しかない「臨界期」という大切な期間が存在することがおわかりいただけたでしょうか。

臨界期に必要なことは?


これまでの説明を読んでくると、
「では、生まれてきた自分の子供の臨界期には、何をすればいいの?」
「臨界期を逃してしまったら、取り返しのつかないことになるの?」
と悩んでしまいそうですが、そんなに極端なものではありません。
 
最近では、「ある期間が、ある能力を獲得するために適した期間ですよ」と幅をもたせた表現として、「臨界期」の代わりに「敏感期」という言葉が使われています。
普通に我が子と過ごしていれば、必要な時期に、必要な情報が自然に与えられるはずなのです。
 
たとえば、社会的な協調関係の基礎が形成される時期は、生後5~6週から始まり、6~7ヶ月頃までの期間ではないかといわれています。
この根拠は、生後6ヶ月未満に行なわれた養子縁組は、それ以降に行なわれた養子縁組に比べて、親子関係を作り上げるうえで比較的問題が少ない、という統計によるものです。親子がごく自然に接することで、社会的な協調関係の基礎が作られるわけです。
かといって、生後6ヶ月以降に養子縁組をした人が、みな協調関係がないかというと、そんなことはありません。
臨界期は厳密ではなく可逆的なものであり、時期を逃してもある程度は取り戻すこと、または育てることができます。
 
ただ、やはり身につけるのに最適な時期というものはあるので、この時期を黙って見過ごすのは勿体無いですね。せっかく身につけやすい(伸びやすい)時期があるのですから、できるだけ伸ばしてあげられるのは良いことです。

本当にその教育は必要?


でもちょっと待って、本当にその教育は必要なの?
と思うことは多々あります。
 
「絶対音感」にも臨界期があります。
絶対音感というのは、基準となる他の音の助けを借りずに音の高さ(音高)を音名で把握することのできる感覚をさしますが、3~5歳までの間にその訓練をしないと、一生身に付かないといわれています。
 
絶対音感についていえば、すべての人に必要かどうかは疑問です。絶対音感をもっているために、音楽が音名や音階で浮かんでしまって楽しめないという人もいます。音楽を楽しみたい人にとっては、邪魔になることもあるのです。
 
多くの育児論のなかには、この絶対音感をはじめ、英語や算数などの教育に臨界期(敏感期)を当てはめて、早期教育を唱える人たちが少なくありません。早期教育が良いか悪いかはわかりませんが、当園においては早期教育は推奨しておりません。
 
大人の「こうだったらいいだろう」といった先入観や思い込み、または金儲け教育ビジネスの犠牲者として幼児の育ちを一方的な方向に持って行ってしまう危険性を考えることが必要です。

OLive保育園における幼児教育


OLive保育園では、早期教育ではなく臨界期(敏感期)に合わせた適切な時期の教育として「適時教育」を行なっています。
 
言葉を最も効果的に身につける時期はいつだと思いますか?
実は幼児期なのです。
 
生まれてから1歳半頃まではほとんど言葉を話せません。しかしそれからたった1年半で3歳になる頃には日本語を話せるようになります。
このことから、この時期は一生の中で最も言語に対する吸収力が高い時期といえます。
ですから、この時期に日本語の教育を行うことが効果的と考えます。
日々の生活において使う言語は日本語です。そして日本語は小学校からの学習の基礎ですから、幼児期から日本語に対する感性を高めておくことで、その後の学習における伸びを期待することができます。
また、幼児が大好きな歌やリズムと行った音楽と簡単な運動を組み合わせた教育は、音感や運動能力を育てることができます。
 
このように、幼児期には幼児期なりの教育があります。

家庭において臨界期にしたいこと


上記の教育は乳幼児期の子育てに特化したOLive保育園だからできるものですが、ご家庭での育児で必要なことは何でしょうか。
 
臨界期(敏感期)にぜひともやったほうがいいことがあるとすれば、それは我が子とのコミュニケーションにほかなりません。
赤ちゃん(子供)のしぐさや動き、表情をよく観察し、それらの発信に応えること。
これこそが、「たいせつな時期」に必要な刺激であり親子の愛着形成なのです。
 
このページを通してお伝えしたかったこと。それは「我が子をよく見ること」につきます。
乳幼児は、大人が思うほど軟弱な存在ではなく、主体的な能力をいっぱい秘めています。我が子をしっかりと見つめ、その生きる力、能力のすばらしさを探り出してみてください。
きっと、我が子と過ごす時間が、至福のひと時として輝いてくるはずです。